「これが自分の顔だから。」~顔面麻痺を受け入れて~①の続き
翌日、車で30分の所にある大学病院へ行きました。
先生の予言どおり、病院は患者さんでいっぱい!
前日に持って行った本は全て読み終えてしまいました。
大学病院のロビーにちょっとした図書コーナーがあり持ち出し可能だったので、息子は耳鼻科待合室と図書コーナーを何度も往復していました。
元々、ごねたりぐずったりすることがなく、本があればご機嫌に過ごせるタイプだったので助かりました。
私とパートナーは息子の麻痺した顔を見ながら、
「いったいこの子に何が起こっているのだろう?」
と話していました。
いつ名前が呼ばれてもいいようにパートナーと交代でサッと昼食を済ませました。
お昼を過ぎた頃になって、やっと名前が呼ばれました。
紹介状にあったA医師の名札があった診察室の中に入ると、目の前には昨日の休日夜間診療所で分厚い紹介状を書いていた若い男性医師が座っていました。
昨日の分厚い紹介状は自分宛に書いてたんかい!
思わずツッコミを心の中で入れてしまいました。
医師は自分宛に書いた書類を丁寧に読み、改めて診察。
まずは検査をすることになりました。
血液検査室へ行くと看護師さんに息子の保定を頼まれましたが、1人で採血可能だと伝えました。
息子はちょこんと椅子に座り、左側にある腕を乗せるための小さい枕のような物を自ら右側に置き直し、右腕をサッと出していました。(左利きのため)
自分の採血の様子をガン見する息子。
周りの患者さんや看護師さんに
「ぼく、えらいねえ!」
と褒めてもらい、ニコニコと嬉しそうでした。
次はCT。
7歳ぐらいだと、慣れない状況に不安になって泣き出したり、暴れたりする子供もいるそうです。
息子は初めてのCT検査に興味津々。
1人嬉しそうに中に入って行きました。
見送る親の方が不安…。
中で技師さんにまた褒めてもらったみたいで、ニコニコと笑顔で出てきました。
本当に手のかからない子供でした。
全ての検査を終え、また長い時間待ちました。
名前が呼ばれたので診察室へ。
医師が検査結果を見ながら告げた病名は
『ラムゼイハント症候群』
※ラムゼイハント症候群とは
小児期に罹患した水疱瘡のウイルスが、水疱瘡が治った後も神経節に潜んでおり普段はおとなしくしているが、何らかの原因で免疫力が低下した時に顔面神経節内に潜んでいたウイルスが再活性化して炎症が起こり、腫れた神経が周囲の骨によって圧迫されて神経の機能が低下し、顔の筋肉を動かしづらくなる。(麻痺が起こる。)
息子のような年齢での発症は珍しい。
ラムゼイハント症候群は予後不良になる事が多い。
(自然治癒は30%、初期から十分に治療を行っても治癒は60%と言われている。)
今後麻痺がどの程度回復するかは不明であるが、まだ若いのでマシにはなる可能性はあるだろう。
と言われました。
予後不良ってどういうこと?
麻痺が治らない?
この先、〇〇はどうなるの?
頭の中が一瞬でパニックになりました。
そこに追い打ちをかける一言。
医師「今から入院となります。」
は?
今から入院?
息子は即入院となりました。
診察室を出て、付き添ってくれていたパートナーに報告。
パートナーも驚いていましたが、私はパートナーに説明をすることで少し落ち着きを取り戻しました。
息子は不安がることもなく、この非日常的な空間が少し楽しそうでした。
小学生男子。
好奇心いっぱいで何より。
その後、仕事を早退して来てくれた母と交代し、私とパートナーは一旦帰宅。
時すでに夕方。
パートナーにこの3日間のお礼を言って別れた後、入院の手引きを見ながら大慌てで荷物をカバンに詰め込み、今度は1人で病院に戻りました。
私達が病院を出た時、息子は4人部屋のベッドに横になって点滴をしていましたが、病室に戻ると息子の姿がありません。
慌ててナースステーションに行くと、ウイルス性の病気なので個室になったとのこと。
ちなみに治療する上で必要がある個室入院の場合、差額ベッド代は発生しません。
パジャマに着替えて、旅行気分なのかちょっと楽しそうな息子。
けれど顔の左半分は垂れ下がったままの息子。
こうして1週間の入院生活が始まりました。